本当はどこへ行きたいの

「さしあたる事柄のみをただ思え、過去は及ばず、未来は知られず」


とは、中村天風師の言葉だ。


今現在、しなければならないことだけを考えなさい。


過ぎ去った過去を悔やんでも変えることはできないし、先のことをいくら考えても分からないのだから。


反省と後悔とは違う。


反省とは、未来を変えようとすること。


後悔とは、過去を変えようとすること。


人生とは選択の連続。


選択して間違えたら、そこからまたやり直せばいい。


失敗を恐れ、何も決めなければ、前に進むことはできない。


即今(そっこん)という、今日(こんにち)ただ今を真剣に生きれば、選択に迷うことはない。


満足人間でありたい。





建国以来、「選択の自由」を掲げてきた米国で幸福度の低い人が多いのも、社会が成熟するにしたがって選択肢が増え過ぎてしまい、迷い悩む人が増えてしまったせいかもしれない。


実際、米国の心理学者バリー・シュワルツ博士は、「選択肢が多すぎると、人は不幸せになる」という論文を発表している。


選択で苦しまないためのヒントとして、シュワルツ博士が提唱しているのが、「満足人間(サティスファイサー)」になろうということだ。


シュワルツ博士によれば、人には「最大化人間(マキシマイザー)」と、「満足人間(サティスファイサー)」の二種類がいる。


「最大化人間」は、自分にとって最高の選択を望むがゆえに、あれこれ迷ったり悩んだりして、なかなか選択できない。


ようやく一つを選択しても、「もっと他に良いモノがあったのでは」と考えてしまう。


そのため、いつまでたっても満足できないし、後悔することも多い。


幸せな結婚生活を送っていても「もし、別の人と結婚していたら」と、つい考えてしまうのがこのタイプだ。


それに比べ、「満足人間」は自分の価値観がしっかり定まっているので、ほとんど迷わない。


人の意見や情報に惑わされず、即決して我が道を行く。


たとえ選択が失敗に終わったとしても、「自分が選んだことだから」と、クヨクヨ後悔したりしない。


シュワルツ博士は、「満足人間」になるためには二つのことが大切だという。


まず、人生における選択に「絶対的な正解」などない、ということを理解すること。


次に、自分の価値基準をしっかり持つこと。


この二つさえクリアできれば、迷いや後悔に苦しむことなく、自分のした選択に満足できる。


つまり、ポジティブに生きていけるというわけだ。


もし、選択した後もモヤモヤした気分のままなら、それは選択を誤ったというより、自分の方向性が定まっていないだけかもしれない。


そんなときは、ちょっと立ち止まって、「本当はどこへ行きたいのか」と自分の心に聞いてみよう。


「自問」には、僕たちが思っている以上の威力があるので、ぜひ試してみて欲しい。


ただし、真剣に心から「自問」することだ。


人生には色々な道がある。


行きたい方向さえ決まっていれば、いつかは目的地にたどりつく。


人生のドライブはもっと楽しくなるだろう。




*1分で感動から転載